2022.5.29「特集 それは、いつか耳にした映画音楽」
★新作映画のご紹介
シェイン 世界が愛する厄介者のうた
★特集 それは、いつか耳にした映画音楽
ホワット・ライズ・ビニース
続・荒野の用心棒
ロイ・ビーン
惑星大戦争
ゴジラ
サタデーナイトフィーバー
フラッシュダンス
アラビアのロレンス
007 / 私を愛したスパイ
★ハッピー・バースデイ・コーナー
バットマン ※ダニー・エルフマン 5/29 誕生日
ジャージー・ボーイズ ※クリント・イーストウッド 5/31 誕生日
★追悼 俳優・渡辺裕之氏
ウィンディー
いつか耳にした映画音楽。怪しい特集タイトルです。去年の12月に、「それをサントラと受け止められるかな」という特集もやりましたが、その続編的な扱いなのです。つまり、映画音楽と言えども既成曲などが引用されたとき、たとえば「スタンド・バイ・ミー」の同名主題歌や、「ゴースト ニューヨークの幻」の 往年の名曲、アンチェインド・メロディー、そしてタランテイーノらが多々劇中にDJの如く使用しまくるロックやソウル、ブルーズなどなど。そうした他から拝借してきた楽曲たちを、果たして「映画音楽」とカテゴライズして良いのかどうか?という提示がテーマでした。今でこそ既成曲使用は普通に行われていますが、それはリスペクトやオマージュといった、作り手からのメッセージが伴っているものが多く、そうした精神論含めた使い方が正攻法とされていったことにより、映画的完成度も増し、年月を経て、そうしたアプローチも新たな映画技法として地ならしされてきた印象は確かにあります。
今回はそんな既成曲でも「映画音楽」のみに絞り込んで言及していく特集です。つまり、Aという映画に、Bという映画のために作られたサウンドトラックを引用している作品。BはAのために作られたものではない、Aのためのサウンドトラック、ということですね。ご多聞にもれずクエンティン・タランティーノ監督がそうしたB to Aの先駆者と称されていますが、それは使用する際の演出度がある意味 “濃すぎる” だけであって、実は以前から多々、B to Aな「映画音楽の引用」は行われてきました。特に「イメージの固定化」を利用した「リマインド的演出」と称すれば良いのでしょうか。今回紹介する中で一番特徴的なのが「アラビアのロレンス」の、モーリス・ジャールによるテーマ音楽です。「砂漠」や「砂丘」、そして「アラビア」といったモチーフや場面に対して、イメージ付けの為に「アラビアのロレンス」のあのメロディーが、あえて付加されているパターンがなんと多いことか。仮にその音楽が流れなくとも、既に自然と頭の中で、砂漠の広大なシーンがあるとあのメロディーが浮かんでくる。あるいはそれによく似た楽曲をつい付けてしまうコンポーザーもいるのでは。そういったイメージの擦りこみを逆手に取り、引用することによって観客に共有感を与えるような、そんなリマインド手法がよく登場するのです。
しかし観ている側がそのすべてを受け入れるわけでもなく、いつかどこかで聴いたことのある楽曲…、そんな程度の擦りこみであると、リマインドどころか、デジャヴュー現象が起こってしまい、せっかく映画を楽しく観ているのに、不要な情報が入り込んできてやや頭が混乱してしまう、といった事態も起こり得ます(自分がそうです 笑)。言ってみればそれほど映画に対する「音楽」の役割というものは重要ですしデリケートなものでもあると思うのと同時に、では演出する側の作家性や嗜好性も含めて、映画の切り口になっていないとその提示具合もしっかりと伝わらないのでは、と、これまた不要な心配までしてしまうわけです。ウケようと思って選曲しているんだろうけれど全然伝わってないからね?少なくともオレはなんとなく理解したけれど…、なんてことを感じる機会も最近は少なくありませんし、なるほどここでその選曲とは、なかなかやってくれるじゃないか…、などと感心することだってあるはありますが、はっきり言ってマレです。
こうした特集を重ねながら解説したり、また拙作著書にても熱く書かせていただいているのは、決して「アンチ引用」ではないということです。訴求することはただ一つ。これからの若きクリエイターたちに、「映画=映像+音」、要するに「サウンド+ビジョン」の大切さを知ってもらいたいから、それだけなんですね。あえて「音楽」と言わず「サウンド=音」としたのは、どんな空気の揺らぎを創り出すかによって「映像=ビジョン」の行方が180度変わっていってしまうからです。音楽のみならず、録音された現場音(アンビエント)の質感、台詞のボリュームによる遠近感、効果音(SE)を付ける為の匙加減、そして映像を乗せた段階で自然と牽引していってしまう「音楽」。日常を過ごす上で、果していつも何かとSEが付きますでしょうか?BGMが流れているでしょうか?要するに映画のサウンドはおおよそフィクションであり、それをコントロールして演出することは映像を撮影するのと同じレベルで作りこみが重要だということです。なので、自分は「映画音楽」という側面から、そうしたメッセージを幾度となく発信しているのかもしれません。その引用がパロディーとみなされ、送り手もそう割り切っているのであれば、すべてを思い切り振りきっていただければ、別に何も言わずにただ笑ってスルーできるのに、とも思ったりするんですが。
では、今週の特集「それは、いつか耳にした映画音楽」。よろしくお願いいたします。
映画音楽のご希望曲を受け付けております。
シーサイド・シアターTwitterのメッセージ、
またはメール、seasidetheatre789@gmail.com でもOKです。
是非皆さんの映画の思い出、サウンドトラックと共に、お聞かせください。
お待ちしています!
正式OAリスト
★新作映画のご紹介
シェイン 世界が愛する厄介者のうた
Clock Of Gold : A Few Rounds With Shane MacGowan Summer In Siam The Pogues
Clock Of Gold : A Few Rounds With Shane MacGowan Summer In Siam The Pogues
★特集 それは、いつか耳にした映画音楽
ホワット・ライズ・ビニース What Lies Beneath Alan Silvestri
※「サイコ」へのリスペクト
続・荒野の用心棒 Djang~さすらいのジャンゴ Berto Fia music by Luis Bacalov
※「ジャンゴ 繋がれざる者」にて引用
ロイ・ビーン Miss Lily Langtry (The Life and Times of Judge Roy Bean) Maurice Jarre
※「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」にて引用
惑星大戦争 激突!轟天対大魔艦 津島利章
※「シン・エヴァンゲリオン劇場版」にて引用
ゴジラ ゴジラ/メイン・タイトル 伊福部昭
※「TOKYO! / メルド(レオス・カラックス監督パート)」にて引用
サタデーナイトフィーバー Saturday Night Fever Stayn' Alive Bee Gees
※「ブレット・トレイン」にて引用
フラッシュダンス Lady Lady Lady Georogia Moroder & Joe Esposito
※「君の名前で僕を呼んで」にて引用
アラビアのロレンス Lawrence Of Arabia Maurice Jarre
※「007 / 私を愛したスパイ」「ジュマンジ ネクストレベル」「キャノンボール」などで引用
007 / 私を愛したスパイ The Spy Who Loved Me Nobody Does It Better Carly Simon
※「ロスト・イン・トランスレーション」「ブリジット・ジョーンズの日記 きれそうなわたしの12か月」などで引用
★ハッピー・バースデイ・コーナー
バットマン Batman Batman Theme Danny Elfman
※ダニー・エルフマン 5/29 誕生日
ジャージー・ボーイズ Jersey Boys Closing Credits: Sherry / December, 1963 (Oh, What A Night) Jersey Boys
※クリント・イーストウッド 5/31 誕生日
★追悼 俳優・渡辺裕之氏
ウィンディー Two In The Wind 井上鑑 meets 惣領智子
お知らせ
志田一穂(ジョニー志田)、初の著書
「映画音楽はかく語りき いつか見た映画、時をかける音楽」志田一穂
✴︎出版記念イベント
各地出版記念イベント、盛況にて終了!ありがとうございました!
6月からもさらに新イベントが始まります。ご期待ください!
他、いろいろな情報は志田のTwitter @shidakazuho でチェックしてください!