特集「あてどない冬のドライヴ・サウンドトラック」
ザ・ファブル The Fable チャーリー・コーセイ × Test?Flights
ルパン三世 カリオストロの城 トロピカル・ウェイヴ 大野雄二
ドライブ・マイ・カー
We'll Be Through The Long, Long Days, And Through The Long Nights 石橋英子
We'll Be Through The Long, Long Days, And Through The Long Nights 石橋英子
コフィー Coffy Shining Symbol Roy Ayers
タクシー・ドライバー Taxi Driver
I Still Can't Sleep/They Cannot Touch Her (Betsy's Theme) Bernard Herrmann
I Still Can't Sleep/They Cannot Touch Her (Betsy's Theme) Bernard Herrmann
IP5 愛を探す旅人たち IP5 L'ile Aux Pachydermes
J'arrete La,Je Laisse Tomber~Le Petit Poucet Gabriel Yared
J'arrete La,Je Laisse Tomber~Le Petit Poucet Gabriel Yared
ハルハートリー シンプルメン End Credits: Simple Men Ned Rifleネッドライフル
after report by johnny SHIDA
今回は冬のドライヴに似合うサウンドトラックというテーマで選曲してみました。昔はドライブで聴く用に、カセットテープに好きな曲をダビングしてオリジナル・テープを作ったり、MDの時代になってからも同様にエディットして作ったりしていましたが、今はスマホでストリーミングサイトからどんな曲でもポンポンと選んで再生できるので、とりわけ車内でお手軽DJができてしまうわけですよね。あの頃の「世界に一つしかない自分だけのオリジナル・アルバム」なんて発想は無くなり、日常の中の音楽事情も、なんともフレキシブルでフリーダムになったものだと感じます。
そんな中で、じゃあ好きな曲を選んでみようというときに、映画のサントラなんかを果たしてピックアップするだろうか、とお思いでしょうが、これが意外にもやっぱりサントラって言い方を変えれば映像を際立たせる「BGM」であり、光景や風景に対しての音の「演出効果という役割」だったりしますから、場合によってはその楽曲がめちゃくちゃその状況にマッチして、それこそ映画の主人公になっちゃうような瞬間も訪れたりしてしまうわけです。まぁそんなの個人の感想だったりもしますが、少なくとも夜の首都高速を走りながら「ブレードランナー」のラブ・テーマなんかを聴いた日にはかなりヤバい精神状態に陥りますし、「バック・トゥ・ザ・フューチャー」のテーマや「ルパン三世」のテーマなんかが選曲されたりしたら無駄に走行速度があげてしまうような高揚感にも発展したりするわけです(ボクだけでしょうか)。
今回はそんなアドレナリンをあげるような曲は皆無ですが、しかしリズムやBPMがあがればそれに呼応してスピードもアップ、ということは多分にあると思うのです。そのギリギリのところを狙いつつ、エモーショナリズムが高まりドライブと音楽が一体化していくような楽曲を選曲してみたのが今回のリストだったりするわけです。肌感覚がほとんどでピックアップしてますからこのようなリストは日によって、または場所によって変わっていくものだとは思いますが、イメージとしてはMCでもお伝えしたようにひたすら海岸線をあてどなく走っている感じでして、海という大きな印象にいい意味でシンクロするような曲がいいなと思いながら直観9割で選びました。もう何を言っているのかよくわかりませんが、そもそもドライヴってそういう楽しさがあったよなぁというおっさんの嘆きでもあるので困ったものですね。
いくらドライヴとは言え、レフン監督の「ドライヴ」や、コンピサントラCDが大人気になった「ベイビー・ドライバー」なんかからピックアップするのも別にイイと言えばイイのですが、今回は逆に「タクシー・ドライバー」だったり「ドライブ・マイ・カー」のようなイメージでした。バーナード・ハーマンの「タクシー・ドライバー」はトム・スコットのサックスがメロウなおかげでどうしても夜のイメージがありますが、実はどんなときに聴いても何か緊張感から解放されるリラクシン・サウンドです。とは言えハーマン節ですから、いつなんどき転調してダーク・サイドに陥るかわからないという、違う意味での緊迫感もあったりしますが、それもまたエモーショナリズムで面白いですよね。今話題の「ドライヴ・マイ・カー」の石橋英子の音楽も、昼夜問わずに落ち着いて聴ける楽曲ばかりで、これは本編を観た方ならおわかりになると思いますが、とにかく楽曲ひとつひとつが「間(ま)」として成立しているというか、物語と物語を繋ぐためのアナザー・ルートそのものとして成立している音楽なので、だからとても気持ちが良く聴けるのです。さきほど映像を引き立てるBGMという表現をしましたが、「ドライブ・マイ・カー」についてはそういった存在ではない何か不思議な立ち位置が音楽にあるんですね。アンビエントとして感じる瞬間もありますし、まるで小津映画における音楽的演出だなとも感じました。
そんな空気のゆらぎのような音楽が移動する車窓というスクリーンに寄り添うと、文字通り映画の中の一人として気持ちが浸透していく。長々と説明してしまいましたが、今回の曲たちはそんな演出のもとに束ねたサウンドトラックたちでした。
次回、2022/2/6は、特集「やっぱりスピルバーグが好き」をお送りいたします。どうぞ、お楽しみに。
お知らせ
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