prologue soundtrack
01 ひきしお Liza Philippe Sarde
特集 愛と青春のデヴィッド・フォスター
02 アンカー・ウーマン Up Close & Personal Because You Loved Me Celine Dion
03 セント・エルモス・ファイアー St. Elmo's Fire
Love Theme From St. Elmo's Fire(For Just A Moment)
Love Theme From St. Elmo's Fire(For Just A Moment)
music by David Foster
song by Donny Gerrard & Amy Holland
04 ベスト・キッド2 The Karate KidⅡ(The Moment of Truth PartⅡ)
Glory Of Love Peter Cetera
Glory Of Love Peter Cetera
06 セカンド・チャンス Two of a Kind Take A Chance John Travolta & Olivia Newton John
07 君がいた夏 Stealing Home And When She Danced Marilyn Martin & David Foster
09 摩天楼はバラ色に The Secret of My Success I Burn For You Danny Peck & Nancy Shanks
10 魔法の剣 キャメロット Quest for Camelot The Prayer Celine Dion & Andrea Bocelli
11 ルー・リード/ベルリン Lou Reed's Berlin Candy Saids Lou Reed feat. Antony
after report by johnny SHIDA
70年代に、アーティスト、作曲家、プロデューサーとして活躍の場を広げ、80年代に映画界でも頭角を現していったデヴィッド・フォスター。まさに時代の流れと同調するようなサウンドは、シカゴやアースのヒット曲たちで聴かせたメロウさと、その中に隠された複雑でいて音楽ファンのツボをつくようなコード進行、そしてそれに伴う美しく優雅さを感じさせる独特なメロディー・ライン、それらで構築された、唯一無二の名曲たちでした。これを独自の世界と言わずしてなんと言うのか。そう思わせるフォスター節は、やはり映画音楽=インストゥルメンタルとなっても同様で、特に青春恋愛系には持ってこいの特別なサウンドだったわけです。特にヤング・アダルト・スター(YAスター)映画の金字塔である「セント・エルモス・ファイアー」の音楽はその代表格で、愛のテーマは現在でも、インストながら大人気のサウンドトラックですね。80年代はとかく主題歌や挿入歌がもてはやされた時代ですが、フォスターのインスト楽曲はそれ単体でもシングル・カットする価値が高い作品で、そういった意味でも他の映画音楽とはまた違った立ち位置で存在感を示し、多くの音楽ファン、映画ファンに注目されていました。
手前の番組「波の数だけAOR」でも連動してフォスターのプロデュース楽曲を紹介しましたが、単にAORという括りにするにはちょっとアプローチが広域で、ジャンルというよりは、グッド・メロウ・サウンドと大きく定義すべき普遍的な音楽だとも感じています。だからこそ極めて落ち着きのある人間ドラマや、先の青春映画などへの映画音楽が自然とフィットするのでしょうか。ただのメロウ・サウンドでは味気の無いBGMでしかない場合もありますが、フォスターの場合は本当にグッド・メロウ。背景音楽ながらいい意味で主張とパンチがあるメロディー。なので監督たちはどうしてもその楽曲をしっかり聴かせて空気感を演出しようと、映画の中でフィーチャーしている。そんな傾向が、フォスターの映画音楽には聴きとれるのですね。
そんな個性を映画で発信出来るコンポーザーというのは、音楽畑で実績を積み、アーティスト・カラーをしっかり持った人ならではの賜物だとも言えると思います。そしてさらに重要なのは、時代の動きに準じて映画との関わりもうまくコントロールしている点でしょうか。これが90年代になると、ボーカル楽曲のプロデュースに専念し、全体を彩るというよりも主題歌のインパクトで映画を牽引していくようになっていきます。自身が描いてきた70年代のAORテイストからグッド・メロウへと昇華していった80年代、そして打ち込みやヒップホップが台頭してきつつあった80年代後半からは、よりネイキッドに、よりフォスター・サウンドを突き詰め、「歌そのもの」でブランディングしていくアプローチになっていったわけです。見事なのは、意識したアレンジで80年代テイストをあまり感じさせない、進化型のフォスター・サウンドを提供している点で、その顕著な楽曲が「ボディガード」の主題歌だったのではないかと感じているのです。そうした時代の波を捉えながらの活躍は、その後さらにプロデューサーの重鎮として語り継がれていくことを、納得させる大切な布石であったとも思うのです。
今回の特集ではやはりというか、どうしても80年代映画の活躍ぶりに特化してしまう内容になったわけですが、あらゆる時代の流れでも個性を変化球で合わせていく職人技こそがフォスターの真骨頂なのだなと、改めてこれまでの活躍を振り返り、納得しました。なかなかいないですよね、そういうアーティスト、プロデューサーという人は。
次回、11/7は、特集「サウンドトラックは都市に響く」をお送りいたします。どうぞ、お楽しみに。